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ウェスの本をなんとなく図書館で借りてみた。

あまり本気で読むつもりはなかったのだけど、どんどん次が読みたくなる本、読んでよかった本だった。

エイドリアン イングラム
JICC出版局
1992-02


ウェスの経歴だけでなく、演奏スタイルや音楽的センス、人柄に至るまで結構詳細にわたって書いてあった。しかも出典も明記されている。ジャズファン、ウェスファンにとっては、非常に貴重な資料ではなかろうか。Wikipedia日本版の情報ではわからなかったことがたくさん書いてあったし、貴重な写真もたくさんあるし。

すごくいい本だったので、メモをしておきます。


この本でわかったこと
  • ウェスモンゴメリーの人柄は、温厚、控えめ、素直、家族第一。ジャズミュージシャンにして、麻薬、酒、女遊びとは無縁だったとか。チェーンスモーカーではあったみたいだけれど。
  • ウェスは、後年A&Mレーベルに移籍してからはコマーシャル路線に傾いていって成功を収めた。評論家やジャズファンからは残念がられたが、ウェスとしては家族を養うための選択だった。
  • ウェスといえば、なんといってもオクターブ奏法、親指奏法だが、その他にもシングルノートソロ、コードワークも素晴らしかった。
  • ウェスがギターを始めたのは、19〜20歳とは世間で言われているが、4弦ギター(テナーギター)を12歳以前から弾いていた。
  • 音楽的正規教育を受けておらず、独学。楽譜も読めないが、非常に耳がよかった。
  • 正規教育がなかったからこそ、常識をぶちやぶる演奏を習得した。例えば、オクターブ奏法の可能性を大きく広げた。
  • チャーリー・クリスチャンが、ベニー・グッドマンと共演している「ソロ・フライト」に衝撃を受け、ギターを買ってから8ヶ月間ほどでチャーリー・クリスチャンのレコードを完コピした。
  • 他のモンゴメリー兄弟もミュージシャンであり、よく一緒にプレイしていた。
  • ウェスの注目していたジャズミュージシャンは、ジョン・コルトレーンやマイルスデイビス、ソニー・ロリンズなど、ホーンプレイヤーが多かった。
  • ウェスの注目していたギタリストは、まず、バーニー・ケッセル。彼のフィーリング、コード概念、常にいろんなことをすること、ホーンフレーズ。そして、タル・ファーロウ。ドライブするところ、コードの概念。そして、ジミー・レイニー。スムーズさ、間違った音を弾かず、シフトなタッチ。
  • 所有していたギターは、L5 CES、L4、175D、125Dなどなど。
  • L5に使用していた弦は、ギブソンのハイファイ・フラットワウンドで、014, 018, 025, 035, 045, 058(3弦以上が巻き弦)
  • リバーブとトレモロのコンビネーションを気に入っていた。使用していたスタンデール、フェンダーのアンプに標準装備されている。
  • 巷のギターアンプには音的にあまり満足していなかった。

以下、個人的に印象に残った箇所を引用させていただきます。


「何事も人生と関わりがあるんだ。ミュージシャンによっては、音楽をやることがきわめて個人的なものだと感じているために、それだけに集中しようとして、他の世界とは関わりを持とうとしない。僕はそこまで音楽に携わろうとは思わない。そのために他のことに対する興味を失いたくないし、僕にとって音楽はいまだに趣味なんだ」

耳が痛い。。。。
バーニー・ケッセル、ウェスを語る
「人間的には根本的にどっしりと地に根ざし、誠実だっていうことだろう。…中略…控え過ぎず、出過ぎず、利己的過ぎず、ただひたすら温かかった。ギターを道具として使っていたと思う。つまり彼の内部に音楽があるわけで…中略… だってただただ自分の内なる音楽を音にして出したかったんだ。

チャーリー・クリスチャンのレコードを本当によく聴いたよ。僕にもできるはずだって思った。やろうって決心したんだ。6-8ヶ月経つと、僕はレコードのソロを全部弾けるようになっていた。そしてクラブでそれをその通り弾くという仕事を始めたんだ。

世界中のどの美術館へ行っても、巨匠のコピーを忍耐強くやっている向上心に燃えた画家を見つけることが出来るだろう。同様に、若いミュージシャンは自分の好きなミュージシャンのレコードを聴いてテクニックと自己表現の方法を吸収するものだ。たとえば私が演奏を始めた頃、チャーリークリスチャンのパートをレコードで一生懸命聴いたものだ。

やっぱ最初はとことんコピーをするのがいいのかなぁ。

クレッセンド誌の1965年7月号に掲載されたギター座談会で、ウェスは映画を見に行くといつでもサウンドトラックのコード進行がわかったと語っている。

すんごい耳。。。
 
「プレイヤーは自分で問題を解決していきながら、自信を築き上げていくものなんだ。能力の限界があったとしても気にすることはない。親指で弾くことと、オクターブ奏法も、そうした限界があったからこそ生まれたものなんだ。僕たちには限界があるだろうけど、それはそれとして認めた上でそれを超えた意味のあるものを作りあげなくちゃいけない。僕がやってることは技術的には正しくないかもしれないけど、それでも音楽はちゃんと生まれてくる。僕は僕のことを伝えるために演奏しなくちゃならないからさ」

これに近いことを、メンタリストDaiGo氏も仰っていました。具体例として、TEDにも登壇されている、フィル・ハンセンというアーティストを挙げています。彼は、元々超精緻な点描画を書いていたそうですが、ある日から手の震えが止まらなくなり、嘆いていたたけれど、逆にその手の震えをそのままに絵を描いたら成功した、と。つまり制約条件は時として才能を開花されるものになると。

ジャック・デュアルテ
彼はフィンガーボードの仕組みについて関心がなかった。しかし、どこを弾けばどんな音が出るのかはよく知っていた。


非常に自己批判的。演奏についてずっとに苦労し続け、とりわけ自分の演奏について不安がっていた。

1966年10月号 ギタープレイヤー誌
几帳面に、忍耐強く、一生懸命に、彼はギターに精を出した。その複雑さに屈服させられそうになったり、自分の頭の中にあるハーモニックパターンに腕がついてこないことに苛立ちながら。彼はギターの入った楽器編成なら、地元のバンドであれ、ツアーでやってきたバンドであれ必ず見に行った。そしてギタリストの手だけを集中的に観察した。彼は8ヶ月間一生懸命に練習した。自分の買ったものをムダにしまいと心に決めて。


ソロ・フライト(ベニーグッドマンとの共演)が凄い、今でも僕は聴いているんだ。



僕はミュージシャンになろうなんてまったく考えたこともなかった。

音楽は趣味だ、とも。

僕はギターのテクニック面に関してそんなに気にならない。フィーリングを大切にしたいんだ。


何か別のことを始めようとする前に、やるからには完全に仕上げなきゃとか、すごく時間がかかるだろうななんて思ってしまう

本書の中にも「天才「才能」と並ぶが、確かにある程度はそうなのかもしれないが、ちょっと違和感があって、それは、キンコン西野さんがブログで、才能で難なく成功しちゃったという人を見たことがない。皆圧倒的努力をしてきている、的なことを書いておられたから。そして、このウェスのコメントからわかるのはウェスほどの達人でも、何でもかんでも簡単に習得できるわけではないということ。


これ、図書館さん、ぜひ大事に所蔵しておいてほしい。
それか買いたいなぁ。