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先日、山下洋輔さんを拝見してから、興味を持ってしまい、山下さんの音源やら本やらを読んでおります。つい最近はこの本を。

山下洋輔さんという偉大なジャズピアニストがどうやって育ってきたのか、音楽への向き合い方、などが、ジャズファンであり、山下さんのファンである茂木健一郎さんとの対話の中でガンガン語られております。興味深すぎてソッコーで読了しましたので、メモをば。

たぶん、この本が一番伝えたいこと(=茂木さんが一番伝えたいこと)は、日本や日本人の今の生き方を、楽譜が前提になりがちな現代のクラシック音楽になぞらえて、画一的になってしまっている。だから活力が削がれている。ジャズのように、もっと自由に生きていくことこそがこの国には必要だ!という感じです。

その主論については、全面的に肯定しかねるものの、一理はあるかもなぁと思いつつ、まぁそれは置いておいて、個人的に一番興味があったこと整理したいと思います。そうなると当然音楽や学習についてのトピックです。

どうしたら自由に即興できるようになるか

この問いに対する山下洋輔さんの答えは、言葉と同じようにボギャブラリーのストックが必要、というもの。そしてそのストックをどう繋げて使うかがその人の個性になると。
また、即興演奏している最中は、「今ここで何かを創造しているのだ」という意識がとても重要と説いておられます。マインドフルネスですね。自分の持っているありとあらゆるものを叩き売るように出し切る覚悟で臨まないと満足のいく演奏はできないと。そのためには、技術や知識をなんでも吸収することが大切。
「じゃあ、どうすればジャズのような音楽が弾けるの?」というところから勉強が始まり、いろいろなメソッドを覚えて、ジャズらしい即興をすることを続けました。そして最終的には、「即興は何をやってもいいんだ」というところにたどり着くわけです。

出典元「脳と即興性 いかに不確実性を楽しむか」
この山下さんの言葉に大事なことがたくさん凝縮されている気がします。超噛み砕いて読むと、山下さんも最初はまずは真似をしていたんでしょう。ジャズの先人たちの真似を。それを続けて発展させていくことでオリジナルが生まれていくんだと。やっぱり何でもまずは真似からなんですね。

アウトプットに苦しむことこそ良い学習

こちらは茂木さんのご見解。茂木さんはやったこともないボンゴを構えて、山下洋輔さんとセッションをされたことがあり、その時苦しかったそうです。慣れないことをやったわけですから、当然なのですが、茂木さんによると、そうやって脳にアウトプットのプレッシャーを与えることこそ良い学習とのこと。この話に影響されて、僕も最近毎日アドリブ演奏をすることに決めております。

緊張や恐怖を乗り越えること

山下さんは、ボレロのメロディーをミスして帰宅後に自殺したというドイツのクラシック奏者を例に出し、あらゆるミュージシャンは失敗への恐怖や緊張を抱えながら演奏していると思うと指摘。山下さんご自身も、若いころセッションに出かけるときは朝からドキドキしていたと告白されております。
人前で弾くことは嬉しいことだけど、恐怖でもあると。ミュージシャンたちは緊張しない特殊な生き物なのかと思ってましたが、こういうことを聞くと「あ、ひょっとすると同じ人間なのかもしれない」と勇気付けられた気がします。だからと言って、緊張から逃れられるわけではないですが、「なんだプロもそうなのか」と自分を許せる十分なキッカケになると思います。いや、てかむしほプロの方が生活とか評価とかメンツが掛かってるわけで、アマチュアの想像を絶する緊張の中でステージに立っているのかもですね!

TOEICを蹴飛ばしてやりたいことをやれ!

タイトルはだいぶ意訳してます笑。茂木さん曰く、つまらないTOEICの英文テキストを読み込んで会社の採用や出世の点数稼ぎをしようなんてことを考えないで、自分が読みたいものを読んで、仮に下手でもワイルドな英語を身につけたほうがよっぽど良いと。それはそうかもと思いました。ジャズも同じかもですね?「これをやらなければ」「あの曲を聴きなさい」なんて人や教則本のアドバイスに全て従うのではなく、自分が本当に興味を引かれたものに取り組んでワイルドなジャズを身につけた方が良いのかもしれません。

アート・ブレイキーだって外国人

この話はおもしろかったです。みなさんの中でもジャズをやる人なら、「嗚呼、自分も黒人に生まれていれば...」とジャズネイティブのアイコンと言える黒人にコンプレックスを抱いたことがあるのではないでしょうか。ちなみに、僕はないです笑。でも、日本人がなぜ外国産の音楽=ジャズをやるのか?という問いは少なからずありました。アメリカ人が雅楽をやってるようなもんかなと。まあ、それはそれでカッコいいけど笑。山下さんは、アフリカ研究家が友人におられるらしく、その友人にアート・ブレイキーのアフリカンリズムとかなんとかっていう音源を聴いてもらったそうなんですね。するとその研究家は、聴きとったそれぞれの音をこれはこの国のこの部族、あれはあの国のあの部族のものと聴き分け、よってこの作者はアフリカンネイティブではないと結論付けたそうです。それを聞いた山下さんは、なんだ、アートブレイキーだって外国人なんじゃないかと。俺たちと同じじゃないかと。アメリカの都会にいて、外国の音楽を勉強して取り入れてるだけだと悟ったそうです。



以上であります。すっごいおもしろくて、この感想文でも当然ながら本の全内容をカバーできてませんので、何度か読み返したくなる本です。