「稲城」ってどこ?てかこれ何て読むの?
と言うところから始まった今回のコンサート。

新宿から京王線に揺られ、降り立った駅は、気持ちの良いくらいただの住宅街。開けていて気持ちの良い住宅街。


古都鎌倉のど真ん中のカフェだったり、渋谷のラブホ街のど真ん中のライブハウスだったり、瀟洒な二子玉川のど真ん中のジャズバーだったり、住宅街のど真ん中のコンサートホールだったり、会場も七変化だなー、小沼ようすけ氏は。


2017-11-25-14-55-15

2人のギタリストの公演。
410席の観客席に対し、ステージ上にはポツンと孤独に置かれた椅子がたった1つ。「ここでソロ演奏するとか恐怖でしょ」と友人。


まず小沼さん、大萩康司さんの順番で各々のソロ演奏があり、その後デュオという粋な進行。


予想通り、ジャズライブと違い、ほぼ定刻通り15:00に開演。


小沼さんのソロ。
僕は常にこのブログで正直に書いている。お世辞や嘘を一切書きたくない。ジャーナリスト魂など1ミリもなくて、自分自身のために自分に嘘をつきたくないから。だから今回も本音で書きます!

PAやマイクを使わず、生音でお届けするというのが今回のコンサートの趣旨だったそうだが、小沼さんの演奏は、個人的にはもうちょっと音量というか音圧を感じたかったなと思う。一緒に観ていた友人は小沼さんが緊張しているように見えたと言うが、そのせいもあったのだろうか。確かに、MCの時は緊張してそうだなぁと僕も感じた。おそらく初めて本番で使ったNew Echizenギターに、比較的やり慣れていない(であろう)コンサートホールでの演奏だからだろうか。

それでも、僕は一曲目のFlowingでは思わず笑顔になってしまっている自分に気づいたし、Explorerもやっぱカッコいい曲ぅ〜小沼さん指動きすぎー正確すぎーと驚嘆したし、Flywayの今回のアレンジも好きだったし、今自分が一生懸命取り組んでいて単音でテーマを弾くことすら苦戦しているOleoをソロでやっているのを目の当たりにしてみぞおちにGackt級のパンチをもらった気分になったし、素晴らしいことには変わりなかった!この5日前に村上ポンタさんと二子玉川で演奏した同じギタリストとは思えないほどの七変化ぷり。この持っている側面の多さ、引き出しの数の超絶さが小沼さんの魅力の一つですね。


大萩さんのソロ。
クラシックギタリストのライブをちゃんと観たのはこれが初めてな気が。最初からマイクを持って「落ち着くまで30秒くらい待ってくれ」と言っていたので、(´-`).。oO「あれ少し弱気なご発言。大丈夫かなーこの方」と思っていたら、全然大丈夫だったw

マイクを置いて、左足を台に乗せ、ギターを股の間に固定して、チューニングを再確認し、全てが整ったら、両手をだら〜んと一回下に下ろして、右手で鼻を一瞬触ってからギターに向かって構え演奏し始まる。毎回演奏前にこの儀式をされていた。イチローのルーティーンみたいなものだろうか。

奏でる音楽も知らないけど、美しい。3曲目くらいになると心地よくなってきたのと、ややマンネリを感じて僕は瞳を閉じたzzz。でもMCになり4、5曲めのタンゴでシャキッと起きた!めっちゃいいじゃん、タンゴ! 

小沼さんと比較すると、同じガットギターなのに、こうも違うものか!という感じ。構え方も弾き方も全く別物。大萩さんはこういう場面での演奏に慣れているのだろうか、小沼さんよりリラックスしていた気がするし、音量も心地よく感じた。弾き方の違いもあるだろうし、楽器の違いもあるかもしれない。ギターのトップの木の種類は音を特徴付ける大きな要素だそうで、小沼さんのシダー(杉)に対し、大萩さんはスプルース(松)。 前者の方が丸みを帯びるのに対し、後者はよりハッキリクッキリするとか。確かにそんな感じだった。


15分の休憩後、デュオ。
大萩さん本人も「インプロヴィゼーション系の小沼さんと譜面ありきの僕が一緒に演奏するとどんな化学反応があるか楽しみ」とMCで語っておられた。当然ながら、同じギターユニットである、Inspired Guitar Duoとも、Allendeとも全く違う世界。個人的な大まかな印象としては、大萩さんが大体骨組みを作って、そこに小沼さんがリズム、ハーモニー、メロディー、オブリ、インプロヴィゼーションなど様々な側面で味付けをしていくという感じがした。個人的に印象に残っているのは、Beyond the sea。クラシックギタリストがメロディを弾くこの曲がこれまた美しくて。

小沼さんは面白いことをMCで語っていた。大萩さんがバッハのとある曲を少し弾くと、「僕にはそれがコードに聴こえる」と。そして小沼さんの解釈でコピーしてみせた。会場は拍手。「でも譜面を見ると、ああ、ちゃんと横で繋がってるんだと気づく」と。いまいち理解しきれなかったが、こういう面でもアプローチが違うのだと思ったし、ジャズ系ミュージシャンの感性のヒントが見えたような気がした。



さて全体の感想。

初めて拝見した大萩さんの織りなす世界観は素晴らしい!クラシックギターもかっこいいなーと思ったし、この人も変態だなーと。左手の小指の大活躍ぶりに見とれた。人間の小指ってあんなに発達するもんなんだと。小沼さんとも運指が全然違う。今後もっと聴いてみたいと思った。


そして、小沼さんに関しては、いつもと全然違う側面が見られたことが今日一番の収穫かもしれないと思った。正直演奏そのものは、いつもの小沼さんライブに比べるとそこまでグッとは来なかった。(いや違うんですよ。これは比較の問題であって。)たぶん受け取る側の僕にあまりクラシックのリテラシーがないこともあるかもしれない。それかもしくは、それの意味するところは、きっと小沼さんもこのジャンルは研究中の分野であって、まだ音楽的にも会場的にもやり慣れていないのではないかと。つまり、この公演は小沼さんにとって、さらに高みを目指していくためのハードルの高いチャレンジだったのではないかと想像しています。既にいろんなことをマスターした小沼さんが、守りに入らず、まだまだ貪欲に新しい世界を切り拓こうとしている証なのでしょうか。

小沼さんはコンサート後、FBやTwitterで「完全生音で素晴らしいホールの響き、ソロ、大萩くんとの 演奏を終えて、自分の中で新たな扉が開きました。その先は果てしない。」とコメントされています。そしてそこに添付されている2人の写真。小沼さんの笑顔は心なしか、満面の笑みという感じではなくて、安堵というよりも課題を感じていそうな表情に見える。ま、完全に僕の妄想ですが。


てか、ええ小沼さんでもまだ果てしない先を感じているんですか??既に僕らから小沼さんまでの距離が果てしないのですが。涙

小沼さんクラスのギタリストでもこういう面があるということは、小沼さんも決して全知全能の神ではなく、同じ人間なんだなぁ。と。おそらくこういうチャレンジや圧倒的な努力の積み重ねで今の小沼ようすけさんがあって、まだまだ自分の理想を追いかけてチャレンジし続けていくと。。。。コンサート中のMCでも「大萩くんと演奏すると引き(弾き)篭りたくなる」と語っていましたね。そう解釈すると尊敬の念がさらに増します。


改めてですが、全てだいぶ僕の勝手な想像です!
小沼さんは果たして今後どこまで行ってしまうのか、行ってくれるのか。僕らにどんな世界を見せてくれるのか。楽しみすぎます。


ここから先は余談。


ちなみにこういう公演では、ご丁寧にセットリストを掲示もしてくれるし、プリントもくれるので嬉しい!

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2017-11-26-10-01-55
「フロウイング」など英語の曲名も容赦なくカタカナ表記なのがエモい。なぜビヨンドザシーだけ例外を許されたのかという細かいところを指摘してしまうこの性格が、僕が女性にモテない理由の一つかもしれない。

こんなに素晴らしい演奏なのに、会場は60%くらいしか埋まっていないような。客層もいつもの感じで40代以上が中心と思われる。なんで若い人はこんな少ないかなー。